日々のこと

鈴木治行「語りもの」シリーズ全作公演 07.9.16

文京区小石川図書館での無料ライブ。

客はある程度は入るだろうとは思っていたけれど、まさか立ち見が出るほどの大盛況になるとは思わなかった。

定員80名のところを、100名は超えていたと思う。

曲リスト

1.「陥没-分岐」(2000)
   語り:秋山徹次 sop:太田真紀 pf:清水友美 vo:原みどり
   key:河合拓始

2.「浸透-浮遊」(1998)
   語り:佳村萠 fl:梶原一絋 pf:清水友美 g:今井和雄 cb:守屋
   拓之 sound:有馬純寿

3.「伴走-齟齬」(1999)
   語り:秋山徹次 pf:河合拓始 トモミン:大谷能生

4.「沈澱-漂着」(2003)
   語り:佳村萠 fl:梶原一絋 g:今井和雄 sound:有馬純寿

5.「前兆-微光」(2007,初演)
   語り:鈴木治行 sop:太田真紀 vc:多井智紀 a-sax:大谷能生
   sound:有馬純寿

以上5曲。2時間位。演奏時間は正味80分程度。(CD-R1枚に収まりました)

鈴木治行というのは、俺は全く知らなくて、だから当然の如く「語りもの」とは何?

そのような予備知識も全くない状態で会場へ。

1曲目。
いきなり混沌。クライマックス。
ソプラノとボーカルと語りがめいめいに歌い、語りだす。
全く違うメロディー。センテンス。どこにも調和は見いだせない。
ピアノとキーボードも調和なし。
語り手秋山徹次の合図で、一斉に止まったり、再び始ったり。

語り手がコンダクター的役割を果たしていて、秋山の語りはとても落ち着いていて、その印象が強く残る。
ソプラノの太田真紀も印象深い。

個々人の印象ばかりでなく、初めて聴くこの「語りもの」。
音の可能性の飽くなき追求だろうか。
非常に面白い。

2曲目。
語りは佳村萠。秋山と比するとその存在感が弱く感じられる。
フルートの梶原一絋の才能に驚く。
有馬純寿の効果音もよい。
今回目当てだった今井和雄のギターは、殆ど聴き取れず。
1曲目に比べるとオーソドックス。
語りがあって、音があって。
語りと音が対峙、あるいはシンクロする。
そこに無限のイメージを拡げることが出来るか。

この曲が、「語りもの」最初の作品だそうだ。

休憩をはさんで3曲目。
再び語りは秋山。
やはりこの声はよい。よく響く。
トモミンという楽器はテルミンのもじりがその語源だそうだけど、およそそれに比することも出来ないくらい音程が外れる。
やけっぱちな、糞くらえ的なトモミンと、ピアノとのデュエットにならないデュエット。
秋山の語りが入りこむ。

4曲目。
語りは佳村萠。
この声はどうしても素通りしてしまう。
やはりフルートの梶原一絋が素晴らしい。
今井和雄はここでもおとなしかった。

ラスト5曲目。

これは初演なのだそうだけど、これは面白い。
語りの鈴木治行も印象的だし、その言葉が、イメージを膨らませる。
「3分58秒後に、ソプラノはシューベルトを歌いだすだろう」
なんて、かっこいい台詞だ。

(そして実際に、ソプラノは、キッチンタイマーの合図とともに、その時間に歌いだすのだった)

サックスの大谷能生も突如として叫びだす。
強烈なブロウは、これではっと目が覚めた人もいたのでは。
ソプラノの太田真紀がやはりよくて、1曲目よりも面白い音だと個人的には思った。

あっという間の2時間。
隣のおじさんは寝息を立てていたけれども、俺には面白くて仕方がなかった。
音には、これほどまでに可能性があるのかと。
そしてそれを追求する演奏者や鈴木治行の姿勢に、尊敬の念を覚えた。

彼らはノーギャラで演奏しているのであって、いわゆるショービズ的音楽とは対極の音。

しかしながらその演奏レベルは前者を軽く凌ぐほど高いのであり、そして好きな音楽をやる。
それを客に聴いてもらう。

この当たり前のことを当たり前にやる彼らは、これこそが音楽家なのではないかと、そうした思いを強くした。

「語り」と「音」で、映像をイメージさせることを目的とする鈴木は、果たしてどこまでこの音を「映画音楽」あるいは「映像音楽」にまで高めようとしているのかはわからないけれども、その目論見は理解出来たような気がする。

この「音」を、どこまで追求できるのか。
そして「音」の可能性をどこまで拡げられることができるのか。

興味は尽きぬ。

ただし、難を言うとすれば、音が全体を通して小さいこと。
これは結構重大な弱点だと思う。

無料でやることからして、どうしても会場に制限がかかるし、図書館で爆音というわけにもいかないだろうとは思う。

けれども、本当に音を楽しむためには、頭だけで聴いていてもだめで、体で音圧を感じたい。
そうすれば、より一層この「語りもの」の紡ぎだす音は、聴き手の我々に圧倒的な存在感を示すことが出来るんじゃないかと思った。

効果音とか、これが大音量で迫ってくれば、絶対に面白いのに。等々、思うことしきり。

映画だって、音はでかいのだから、せめてそのレベルの音はどうしても欲しい。

その時、俺は、この「語りもの」の存在に、まったく新たな可能性を見出すことができるんじゃないかと、そんなことを考えたのだ。

隣の寝息を気にすることもなく、音に集中することができるのだろう。

今の時点だと、意地悪な言い方をすると、頭で聴く音楽。

体で感じられた時、別の地平が見えてくるのだと思う。


とはいえ、俺はこの極めて良質な音楽に出会えることが出来て、大満足。
本当に無料なのかという得した気分。

9月28日の工藤冬里にも行きたいと思ったけれど、さすがに平日で期末の大詰め。
これは見送り。

このシリーズは、これからも定期的に聴いていきたい。


テーマ:JAZZ - ジャンル:音楽

  1. 2007/09/22(土) 05:06:33|
  2. Jazz
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コメント

 どうも〜おひさしぶりでーす。そのライブ行きたかったんですが行けなかったわけです(笑)ライブレポ助かります(笑)

 今最も興味があるのが故高柳さんのお弟子今井和雄氏。例の私塾も多くいる生徒のなかでも唯一の卒業生だと聞きます。どういうプレイヤーなのか気になっているわけです(笑)
  1. 2007/09/25(火) 10:26:28 |
  2. URL |
  3. 印刷アフロ機(今は名前かわっちまいました) #-
  4. [ 編集]

印刷アフロ機(今は名前かわっちまいました)さんどうもです。

今井和雄はここではおとなしかったわけで、やはり彼のトリオ聴かなあかんなあと思っています。

横浜JAZZPROMENADEを横目に、横浜インプロ音楽祭が始まるわけで、10月3日は今井和雄トリオ出演です。(知っていると思うけど)
けれども平日で、ちと厳しいかと思っております。
(前日はThe Thingのライブもあるし)

更には斎藤徹とのOrbitシリーズがあるわけで、これも平日なんだけど、なんとかならぬものかと思っているわけです。

以下斎藤徹のブログのコピペ(知っているとは思うのですが)

10/22(月) planB 今井和雄とのデュオ Orbitシリーズ vol.25 
ビデオ撮影します。
20:00開演 前売り予約¥2000 当日¥2500
TEL/FAX 03-3384-2051
東京都中野区弥生町4-26-20 モナーク中野B1
・地下鉄丸の内線 中野富士見町駅下車7分
・JR中野駅南口より京王バス、渋谷行きか新宿駅西口行、
  富士高校前下車

  1. 2007/09/25(火) 21:55:15 |
  2. URL |
  3. Tatsu #-
  4. [ 編集]

10/15には中谷達也(Perc.)とのデュオがなってるハウス@入谷/浅草・合羽橋にて。20時開演なので、一番行きやすいかも。
  1. 2007/09/26(水) 01:52:01 |
  2. URL |
  3. のの #-
  4. [ 編集]

ののさん情報ありがとです。
15日もやるんですね。
3日、15日、22日と、こうしてみると、結構やっているんですよね。
演奏家だから、当たり前といえば当たり前なのだけれども。

けれども、15日の月曜の20時というのは実に苦しくて、多分行けそうにないのです。

先日休日にピットインでやったのを見逃したのが痛かったなあと今にして思っています。
  1. 2007/09/26(水) 22:48:01 |
  2. URL |
  3. Tatsu #-
  4. [ 編集]

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